「熱い幻想 夢枕獏全仕事」発見! 10年前に一迅社から刊行されたムックが出てきた。陰陽師、餓狼伝、闇狩り師、サイコダイバー、キマイラ、大帝の剣…etc.

夢枕獏と菊地秀行はかつて伝奇小説作家の双璧でありました。

夢枕獏の「キマイラ」菊地秀行の「吸血鬼ハンターD」、夢枕獏の「魔獣狩り」菊地秀行の「バイオニック・ソルジャー」、夢枕獏の「闇狩り師」菊地秀行の「魔界都市新宿」…と、まるで対をなすように人気作を発表し続けた作家たちです。

10年前に一迅社のビジュアルBOOKシリーズで彼らの特集号が組まれました。
それが「全仕事」シリーズです。

夢枕獏と菊地秀行、それぞれの「全仕事」が同時に刊行されました。
私は両方とも買ったと記憶していたのですが、何故か手元に残っていたのは「夢枕獏・全仕事」のみでした。

あまりにも懐かしかったので、この本を拾い読みしながら、夢枕獏さんのことを思い出してみたいと思います。

目次

タイポグラフィック「カエルの死」

カエルの死―タイポグラフィクション
カエルの死―タイポグラフィクション image by Amazon

 

夢枕獏のこの作品を初めて見た(読んだではない)のは「キマイラ」シリーズを読んで、ずいぶん経ってからのことです。

拳法や変身、仏教にちなんだ痛快な作品を読んでいた私は、夢枕獏の処女作というものはそうしたジャンルの短編小説であろうと思っていたのです。

しかし、文字で情景を表現した「タイポグラフィクション カエルの死」は小説家の作品というよりはデザイナーの作品に近いものだったのです。

当時、この作品を見たとき夢枕獏の本質がちらっと垣間見えたように思ったものです。
しかし、いままでの夢枕獏の活動は、その時の想像を越えるほど大きなものになっています。

夢枕獏という作家に感銘を受けながら「カエルの死」を見たことがない方、例えば「神々の山嶺」をはじめて読んだ方は、一度この作品に触れていただきたいと思います。

そして、若かった夢枕獏を想像してみてください。
氏の読みやすい文体をふりかえってみてください。
たぶん、なんともいえない感慨に浸ることができるでしょう。

10年前の夢枕獏・全仕事

熱い幻想 夢枕獏全仕事 (一迅社ビジュアルBOOKシリーズ)
熱い幻想 夢枕獏全仕事 (一迅社ビジュアルBOOKシリーズ) image by Amazon

 

この表紙を見るだけで、以下のような作品群のストーリーが立ち上がってくるような感覚を覚えます。

  • 陰陽師
  • 餓狼伝
  • 闇狩り師
  • サイコダイバー
  • キマイラ
  • 大帝の剣

なかでも「闇狩り師」と「大帝の剣」は大好きな作品です。

闇狩り師

闇狩り師1 (徳間文庫)
闇狩り師1 (徳間文庫) image by Amazon

「闇狩り師」は最初は連作短編集として新書版で刊行されました。
九十九乱蔵の登場はアーノルド・シュワルツェネッガーにダブりました。
ランクルまでも持ち上げてしまう巨躯の持ち主でありながら陰陽道や修験道を極めているというキャラクター像は新鮮でした。
しかも人情もある。

長編になって、簡潔さを欠いてしまうまでは、一作一作が九十九乱蔵に深みを与える素晴らしいストーリーだったのです。

大帝の剣

大帝の剣 (1) (角川文庫)
大帝の剣 (1) (角川文庫) image by Amazon

大帝の剣も大好きでした。

宇宙と時代劇、三種の神器、合体生物、宮本武蔵、佐々木小次郎、天草四郎時貞…
キーワードを並べると破天荒でありながら、魅力のあるものばかりです。

「惑星からの物体X」と「丹下左膳」をくっつけたような魅力がたまりません。

この種の作品では半村良の「妖星伝」が代表的です。
私は「妖星伝」の方を上位に置きますが、「大帝の剣」は娯楽作品として「妖星伝」を越えていると思います。

……

その他にも「呪言道士」までのサイコダイバーシリーズや「陰陽師」「餓狼伝」等が忘れられない作品になっています。

今では文学性の高い作品が多くなった夢枕獏ですが、破天荒で想像を絶するキャラクターが活躍する初期作品群には、他の作家では味わえない面白さがあります。

もう一度それらの作品を最初から読みたいな…と思いながら「熱い幻想 夢枕獏全仕事」に、しばし釘付けになってしまいました。

© bluelady.jp

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闇狩り師1 (徳間文庫)
3巻までが最高です。

大帝の剣 (1) (角川文庫)
全巻文庫化を待って一気に読みましょう。

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この記事を書いた人

はじめまして、ライターの「Lin」です。
アクセスしていただき、ありがとうございます。
ブログ「ブルーレディ」は、平井和正、デヴィッド・ボウイ、アイルトン・セナの3人の情報を軸として、電子化ノウハウ、音楽情報、F1情報…と、コンテンツがどんどん広がっています。
1999年から書きつづけています。
最近は、かなりスローペースになってしまいました。

※フェイスブックではデヴィッド・ボウイ中心の情報を発信しています。

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 伝奇小説といえば半村良「妖星伝」が一番好きでした。マンガでは諸星大二郎「暗黒神話」。あんまり読んではいないのですが好きなジャンルです。
    夢枕さんも読まないといけませんね。

    • たこべいさん、実は伝奇小説の最高峰は「妖星伝」と、私も思っています。
      最後の巻がいまいちでしたが、新刊が出るのを心待ちにしていました。
      第1巻発売当時、私は予備校生で、ハードカバーの本は負担でしたが、エロチックで時代小説でSF小説な「妖星伝」を楽しみにしていました。

      半村良の「妖星伝」に影響されて生まれたのが「大帝の剣」で間違いありません。

  • 獏さんの初期のショートショートも好きでした。
    あと、猫弾きのオルオラネ。感動したなぁ。
    こんな小説も書けるのかと驚いたもんです。

    • カラアゲボーイさん、どうもです。
      私は夢枕獏さんの「猫弾きのオルオラネ」を読んでいないのですよ。
      そうですか、感動しますか。
      読んでみようかな?(時間があればですが…)

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