平井和正の「悪霊の女王」を最初に読んだ時、取っつきにくさといったらなかった。
その印象を長年ひきずることになるのだが…
感情移入しづらいヒロイン:新井亜古
悪霊の女王 (1979年) (角川文庫) image by Amazon
悪霊の女王は平井作品の中でも特異な存在だ。
平井作品といえば主人公に感情移入することが非常に簡単だという特徴がある。
作品を読み始めた瞬間から、作品世界にとけ込み、主人公と同一化することができる。
ウルフガイ、アダルト・ウルフガイ、幻魔大戦、月光魔術団しかり。
しかしこの悪霊の女王だけはこの限りではないようだ。
本当のヒロインは「アニマ」か
主人公は新井亜古。
大悪霊、アニマに憑依された存在だ。
平井作品の多くの主人公が自己の存在を強烈にアピールするが、
この新井亜古はアニマに翻弄され、そこから脱出するのに必死だ。
アダルト・ウルフガイ「犬神明」とは全く正反対の印象なのだ。
非常にネガティブなキャラクターである。
完結はあるのか?
新井亜古がアニマに同一化を遂げたときいったい何が起きるのか?
そこまでたどりついた時、この作品がいったい何だったのかわかるのでしょうが、
未完のこの小説の続編は期待できないでしょうね?
(以上 2000.4.30)
追記
自分で書いておきながらなんですが、このページのアニマについての記述には決定的に誤解があるようですね。
アニマは単純な悪霊ではありません。
宇宙からやって来た存在です。
おそらくフロイに近い存在なのではないでしょうか?
そうした大いなる存在が新井亜古というひとりの人間に憑依していれば、何が起きるか想像もつきません。
思い出しましたが、エリートのアルゴールにも似ている側面があります。
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